CASE STUDIES | 川口 昌浩

  • 川口 昌浩

    Profile

    MISIAのCD,DVD全作品を手掛けるエンジニア。打ち込み、ダンスミュージックをはじめ、生楽器、オーケストラ、ライブステージまで幅広いジャンルのレコーディング・ミキシングに定評を得る。また、MISIAのライヴDVD『THE TOUR OF MISIA 2002 WOWOW EDITION』は社団法人BSデジタル放送推進協会が選出する5.1サラウンド賞を受賞。

  • Interview

    ――今回は特別に川口昌浩さんがミキシングの作業をされているMISIAのプライベートスタジオにお邪魔していますが、こちらのスタジオにモニタースピーカーRM-07を導入するまでの経緯を教えていただけますか?

    「Pioneer DJの本社に伺って、デモルームでの試聴会で聴いて、良かったから使い続けています。仲の良いDJ Somaくんに誘われて参加して。その場にいた人たちからも反応が良くて。このスタジオでエージングなどの作業をして、一ヶ月したら馴染んできたかなって。」

    ――RM-07の大きな特徴としてトゥイーターが中心にある同軸ドライバーなのですが、使い始めて同軸ならではの魅力を感じましたか?

    「同軸は今まで使ったことがなかったんです。ここのスタジオは何回か改装していて、その度にいろいろ試していて。以前は、MISIAのライヴ録音のDVDやブルーレイなどのサラウンドの作品を手掛けるタイミングで、他社の手ごろなスピーカーを導入して、使っていました。HR-07使ってみて感じたのは、やはり位相がいいという事です。その代わりスイートスポットを選ぶんですよ。ミックスをする際にミキサー中央で聴くと音像がバッチリで、位相が良いのというのが特徴ですね。スウィートスポットが狭いので、コーラスなどをダビングする際に椅子をずらさない方がいいですね。普段は会話できないほどの爆音ではないんですけど、そこそこの音量で鳴らしています。」

    ――最初の一ヶ月のエージングされている期間はどうでした?

    「エージングしている間は、高音がジリジリと唸っていましたね。トゥイーターは基本的に同軸でもエージングの期間は必要ですね。」

    ――RM-07導入から約半年経ったそうですが、耳に馴染みましたか?

    「だいたい馴染みましたね。MISIAも作業していて、最初は慣れないと言っていたんですけど、今はRM-07で聴くようになりましたね。もうひとり、ここを使っているプロデューサー/アレンジャーの島野聡が『いいですね』って言っていましたね。彼は初期からMISIAに楽曲を提供しています。」

    ――RM-07で手掛けた楽曲を教えていただけますか?

    「僕がこのスピーカーで最初に落としたのは、現在放送中の『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のエンディングテーマ『オルフェンズの涙』です。アニメ本編の重要なシーンで流れる曲になっています。それからMISIAのアルバム『LOVE BEBOP』と、ライヴのベストアルバム『MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE』のミキシングで使いました。」

    ――MISIAのアルバムでスピーカーを入れてからの違いはありましたか?

    「すんなりと移行できました。耳に慣れるまで意外と早かったですね。MISIAのアルバムには、ギターだけの曲からオーケストラまであって幅広くやっています。」

    ――オーディオスピーカーとモニタースピーカーの違いはありますか?

    「オーディオスピーカーは、家庭にあるリスニング用のスピーカー。モニタースピーカーはギターアンプのスピーカーのようにタフでないといけないと思っているんです。オーディオ用は出来上がった音楽しか聴かないじゃないですか。ただ、このモニター用はベースの音だけ大音量で鳴らしたりするんです。家庭用のスピーカーでこんな鳴らし方をしたら一発で飛ぶと思います。ギターの音を単体で鳴らしたり、キックの音決めなんかで使う時に飛ばずに全然タフに鳴ってくれるんです。」

    ――ライヴ録音とスタジオ録音の違いはありますか?

    「オーディエンスがいることで違いが出てきます。ステージの音だけでまとめてもオーディエンスが絡んだら空気感みたいなものが全然変わってきますよ。」

    ――ここのスタジオでは、どういった作業をされていますか?

    「ここのスタジオでの作業は、歌と簡単な楽器の録音とミックスが主です。その行程全てでRM-07を使っています。」

    ――RM-07ならではの、よく聴こえる楽器やジャンルなどありますか?

    「このスピーカーは何でも良く鳴ってくれると思いますよ。編成が小さなものもオーケストラも。音のアタックが速い気がするので、ダンスものもいいかも。ジャンルを選ばないと思いますね。オーケストラものは手掛けていないんですが、個別で録った音を聴くには違和感なく聴けています。」

    ――RM-07は50kHzまで再生されることが特徴ですが、帯域が広く聴こえることに関しては?

    「それはもう帯域が広い分、僕はやりやすいです。帯域が広いとエアー成分が聴きやすいので。」

    ――RM-07をスタジオにセッティングをされた際のこだわりなどは?

    「スモールスピーカーは今の位置がベストなんですよ。座る位置がちょうど左右の音が届く三角形の頂点になっています。」

    ――RM-07の背面にあるEQなどで設定が変えられますが、カスタマイズしていますか?

    「後ろはフラットで使っています。最初にピンクノイズを鳴らして、座る位置にマイクを立てて波形を見たらフラットだったので、ちゃんと鳴ってていいじゃんって思いましたね。それといつも聴き慣れているCDでも音を鳴らしても問題なかったです。」

    ――では、どういった音源でチェックされていますか?

    「一番聴くのはMISIAの『Everything』。僕ではなくジョージ・マッセンバーグが落としたんですけれど、恐ろしく音が良いので。『Everything』は、最初のシングル以外にいろんな人がマスタリングしていて、トラックダウンした音は同じですがアルバムの収録曲とベスト版の収録曲などで全部音が違いますね。マスタリングでこんなに音が違うんだって思わされました。僕は一番最初のシングルのマスタリングが好きですね。」

    ――録音時やリリース時のフォーマットについて教えてください。

    「この間録ったのは96kHzの32Bitで作業をしました。最終的に落とした2Mixも同じ96kHzの32Bitに落として、マスタリングをアメリカ人のエンジニア、ハーブ・パワーズ・ジュニアにいつもお願いしていますね。このフォーマットで送って、CDのマスタリングとハイレゾ配信用のマスタリングをお願いしていますね。僕もMISIA本人も彼のことを信頼していて、間違いがないんです。セカンド・アルバムから10年以上やってもらっています。」

    ――川口さんのPioneer DJに対する企業イメージはありますか?

    「以前、パイオニア製のコンシューマーヘッドホンを持っていましたが、RM-07は、モニタースピーカーで別物ですね。コンシュマー耳とスタジオ耳では別です。企業名がPioneer DJで“DJ”って付いてますけど、僕は全然気にしていないです。」

    interviewer : 髙岡謙太郎

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